扇子の歴史
扇子は8世紀に日本の京都で発明された伝統工芸品です。1200年以上もの間、「扇」末広と縁起物として、日本で愛用されています。当時は、風を送る物ではなく、メモ帳として活用されていました。紙が大変貴重とされていたので、大切な事を書いたり、和歌という自分の気持ちや情緒を書いていました。平安時代は、扇子は朝廷・貴族の遊芸用か僧侶・神職の儀式用として使用され、一般の使用は禁止されていました。鎌倉時代に、扇子は庶民の使用が許可され、日本の伝統の遊びである能・演劇・茶道にも取り入れられ、広く用いられるようになりました。江戸時代に、ヨーロッパに広がり、日本の折りたたみ式扇子は異国情緒的な品物として、上流階級の婦人方に珍重されます。17世紀のパリには扇を扱う店が100軒を越えていたといわれています。上流階級の女性の間では、風で涼を得るという使用方法ではなく、服飾品の一部で、コミュニケーションの道具として、大流行しました。現在でも、日本では扇子を見ない夏はないくらい愛されている日本の伝統工芸品です。
扇子の使い方
強運を引き寄せるアイテム
扇子は、日本では災いから身を守り、良い事だけを引き寄せる幸運や強運のアイテムとして欠かせない物でした。現在でも、その背景から企業のトップや富裕層が好んで持つ姿や結婚式で幸せになれるように花嫁が持つアイテムとして知られています。
尊敬の意味
日本の茶道では、相手と自分の間に扇子を置き、挨拶をします。相手に対しての、尊敬の意味を示します。また、月謝などを支払う際にも、扇子を広げてその上にお金を置きます。
思考の集中
将棋では、試合中に、扇子を開閉する事で集中でき思考に好影響を与えると言われています。日本では、ビジネスマンがスーツに扇子を持って会議に出ている姿を現在でも目にします。このように、精神を安定させ集中させる為に使用もされています。
子孫や商売の繁栄
扇子は広げると「末広がり」になる事から、縁起が良いとされていて、現在でもお見合いや、子供の成長を祝った七五三、商売繁盛で儀礼や贈答品として送られます。
扇子と恋愛
日本では、平安時代から、扇子はラブレターのように、和歌という自分の感情を書き、好きな相手に送ったり、お互いの扇子を取り換えたり、言葉で語らずに思いや感情表現をする恋愛の小道具でした。その様子は日本の有名な源氏物語という書籍でも示されています。(光源氏という日本の平安貴族が、ある日、夕顔の花を目に留め、それを取ってくるように従者に命じると、その家から少女がでてきて、自分の扇子の上に花を置いて渡しました。その扇子は良い香りがして、和歌が書いてあり、紫式部は恋に堕ちました)。その話から、日本では、5月1日は恋の日とされ、扇子を恋人同士で取り換えたり、好きな相手に送る日として、1990年に制定されました。
ヨーロッパでも、扇子は、恋愛の小道具として愛されていました。「扇言葉」という物があり、洗練された女性は、言葉を語らずに、扇の動きで恋愛感情を表現しました。
例えば、スペインでは、舞踏会で付き添いの目を盗んで、女性が気持ちを寄せる男性へ扇言葉により自分の心を伝えました。
(扇言葉)
- 扇子を閉じ、その後に開いて頬に当てたら、「あなたを好きです」
- 胸の前でゆっくり開いたら「私はもう求婚者がいるから構わないで」
- 扇子をこめかみに当てて上を見ると「一日中あなたを思っています」
- 扇を開いてその陰に目を隠すのは、あなたを愛しているということ。
- 開いた扇をゆっくり地面におろすのは、あなたを軽蔑しますということ。